デリヘル開業
僕らは勝負する
かって、僕は90年代後半から2000年代初めまで、毎月関西エリアの風俗店をまわり、撮影取材を行っていた。その後、行政書士の仕事を始めることになったわけだが、おそらく僕ほどこの業界に関わったバックボーンを持った同業者は他にはいないと思う(この背景こそが、僕のシステムは真似できようとも、けっして追随させない自負に繋がっている)。
当時は法規制も今よりは緩く、店舗型性風俗店で店長やマネージャーとして雇われていた男性従業員も、資金さえあれば比較的容易に独立でき、誰もが成功したとまでは言わないが、ある程度の経営は成り立つ時代だった。
だが、平成18年の法改正で大きく状況は変わった。それまでも店舗型の新規開業は不可能であったが、無店舗型でも受付所は設けることができたため、実質店舗型としての新規開業ができた。中には2号営業として新規開業するケースもあったが、リスクと費用の面では受付所を設けた無店舗型の方が開業しやすかった。
ところが、法改正により、新規では受付所が設けられなくなり、加えて景気はさらに悪化していった。開業したところで誰もがそこそこ儲けられるような状況ではなくなった。
また、それまでは新規開業であっても、元々同じ業界にいた人によるもので、例えば何らかの理由で店を解雇された元店長やマネージャーが出資者に請われる形での開業が多かったのだが、景気が悪化してからは必ずしもそうではなくなった。
一般企業を解雇されたり、自己都合によって退職した人による新規開業や、もしくは自営業者による副業としての新規開業が目立つようになってきた。ただ、残念ながら、上述した通り、誰もがそこそこに成功する時代は終わっていた。早ければ一年も持たないうちに廃業することも珍しくなく、その状況は景気が上向いてきた今でもまだなお続いている。
僕自身、手続きに関わるようになったのは奇しくも平成18年から。この8年間、多くの新規開業のサポートを行ってきた。結論を言うと、試されるのは経営者としての資質と自立性。他の業種で成功を収めてきた経営者でさえも、「この業種は難しい」と口を揃えて言う。
それでも、僕に言わせれば、このジャンルも一般企業と同じ「経営」であることにかわりはない。既に他の事業で成功している経営者がデリヘル開業で失敗するのは、店長に置いてはいけない人材に店を任せてしまっていることが原因だったりする。経営者自身、この業界を知らないという負い目がそうさせてしまっている。
「自分でやったら儲けが出るようになった」
と、ある経営者。つまりはデリヘルであろうとも、経営の根本は他の業種と何ら変わらないということだろう。
自立についても触れておこう。当たり前のことだが、雇用されていたときとは違って誰も指示はしてくれない。宣伝広告費について、考え方はいろいろあるが、初めに多額の費用を注ぎ込み、あとは効果を待つだけといったスタンスならともかく、そうでない場合、自らやれることを次々と見出していかなければならない。逆にいえば、いかに見出せるか。そこで問われるのは自立性。
他に事業を持っている経営者ほど見切りは早い。当然だ、この業種で「食っていく」必要がないからだ。この業種一本の開業者には、とにかく「粘れ、粘れ」と言いたい。その根底にあるのは、この業種で食っていかなければいけないという事実。そう、これで食っていかなくてはいけない、そのために勝負する。
負けないでほしい。