デリヘル
■未希
未来への希望。
ほとんど笑顔を見せない未希。けど、あるとき、一緒にランチをしたときの彼女の気遣いは、僕にとっては可愛い未希そのものだった。一度、彼女は失敗した。だが、未希はそのまま業界に組み込まれることを選ばなかった。そして、2度目の挑戦、人には理解されにくい業種だ。未希の未来の希望ある限り。
■明日、子供の運動会なんですよね
10年ほど前になるだろうか。梅田のファッションヘルス、法的には違法な店で僕らは女の子の取材撮影を行っていた。
当時、違法か合法なんか、わからなかった。特に気にすることもなかった。今思えば、違法な店などいくらでもあった。
個室はわずか3部屋ほど。雇われ店長が足を引きずりながら、対応してくれた。身障者の認定を受けていたかは知らないが。
「明日、子供の運動会なんですよね。だから今日は早く上がりたいんですけど、無理かな」
小学1年生の子供。初めての運動会。もちろん、彼にも家族がいて、生活がある。けっして高い給料ではない。
「いつかは独立したいんですけどね」
そんなふうにも話してくれた。独立といっても、同じ業種だ。男も一度風俗業界に身を置いたなら、なかなか他の仕事に就くことはできやしない。
ましてや、けっしてもう若くはない。
僕自身、肩書きを代えながらもこのジャンルに深くかかわっているのは、思うに、あの頃、彼のような人と多く出会ってきたせいかなと思う。
あの頃と同じようなことを今なお、やり続けているということだろう。それを確認できる度に、僕は安堵する。そう、僕は変わっていやしない。
■強く、ちょっとだけ弱く
俺の友達、ピンクサロンで働き始めた。2人の子持ち、元タクシー運転手、40過ぎのオッサンだ。
「男も女も金稼ごうと思ったらやっぱり風俗だね」だってさ。
世間はクリスマス、サンタクロースの着ぐるみ着せられて、毎晩「ハッスルタイム」とか叫びまくってるらしい。
「子供には見せられない姿だよ」なんて苦笑い。いいじゃないか、いつかはわかってくれるさ。おまえ、立派だよ。
「別にもう死んでもいいんだけどな。保険金も入るし」なんてこと言うから、
そんなヤツに限って死ねねえもんさって言ってやったら、そいつ、悲しい顔してすぐにまた笑い始めた。
世の中、社会の裏側でしか働けないヤツもいる。みんな頑張ってるさ、みんな本当に。
比べて俺は何をしてるんだと落ち込みもすれど、落ち込むな、落ち込むな。いじけてみた、すねてみたところで、誰もかまっちゃくれねえ。
さあ、それより俺もがんばろう。強く、ちょっとだけ弱く。さあ、俺もがんばろう。強く、ちょっとだけ弱く。